「何が食べたいですかー?何でも作るよ!」
「・・・納豆?」
「・・・・・・僕に大豆から作れと!?」
いつもの自分の料理レパートリーの中から、反射的に答えてしまった。
もちろんメイドイン業者の納豆だ。
パックをあけてたれをかけて混ぜるだけ。
お好みで葱や卵を入れてもいい。
「てかそれさ、君が常に食べてるものじゃない?
なんかこう、普段食べれない物をリクエストしてくれるとこちらとしても作りがいがあるのだよ」
ふふん、とでも言いそうな、なんだかすこし偉そうに鼻の下をかいている。
ちなみにこいつが宿題を忘れてきて俺に助けてと懇願するとき、今よりも鼻の下は縮んで眉と目じりは垂れ下がり、口をきゅっと絞って犬がしかられたような顔をする。
それをいつも思い出しては、この今の表情と比べるとなんだか苛っとした。
「納豆買ってくる」
そう言って相手の顔を見ないで財布を準備した。
「こらこら、既製品ばっか食べるのはだめだって!そのためにたまーに僕がくるのにさぁ・・・ほら、拗ねないで拗ねないで。僕が悪かったってー」
「拗ねてなんかない。俺は」
「はいはい。”本気を出せばなんでも作れる”んだよね。
もう、いつもこうなんだからさー」
・・・たまには素直になればいいのに、とぽつりと聞こえた気がした。
俺が素直じゃないとでもいうつもりなのだろうか。
実際に俺がまじめに取り組めばハンバーグ一つ、朝飯前だと思う。
そう――こちらもいつもどおり思っていた折、いつもとは変わったことを聞かれた。
「・・・僕がこういうふうにさ、ご飯作りにくるの、迷惑?」
ひゅ、っと、息をするのを急にやめた音がした。
自分の喉からだった。
聞こえてしまっただろうか。
それだけが気がかりだった。
「別に」
答えた言葉とは裏腹に、本心、迷惑だと感じたことは一度たりてない。
学校でいつもコンビニのパンを食っていた俺を気にして、いつからか家にまでお節介を焼いてきた。
勉強を教えてもらってるお礼だよ、なんて言うが、家までやってきて他人の家事までして、面倒ではないのだろうか。
顔の広い彼だから、ほかの友人と、放課後遊んだりしなくていいのだろうか。
俺にかまってしまって、彼の時間はそれでいいのだろうか。
「そっ、かあ。
・・・あっ、じゃあ今日はオムライスにするね!さっき冷蔵庫みたら玉ねぎとソーセージあったから」
慌てたように台所へ向かう人の顔が、一瞬ある表情を模り、
それがあの、犬がしかられたような表情と被らなかったことに、俺は後悔した。
